変な新聞記事
10月17日(火)に、図書館で「岩手日報」の一面をたまたま目にしたら、「日本介護力世界最低に」という見出しが目についた。読んでみると、介護を担う中年女性が減るということらしい。
家庭で中年女性が介護にあたるケースが多いことを勘案して、65-84歳の総人口を100とした場合の40-59歳の女性の人口の割合を「家族介護力」として示した。
これだけ読んでも「おいおい」と思う。 思わない人もいるのかしら。
「介護力」が中年女性の人口割合だけで示されるのはおかしいではないか。なんのために介護保険があるのか。
詳しいことは、ちょうどジェンダーとメディア・ブログ(マイリスト)の「今朝のとんでも記事」に書いてある。「北日本新聞」の一面にも載ったようだ。朝日、読売、毎日は一面どころか、どこにも載せていないみたい。
なぜ地方新聞に、それも一面に載せるのか。何か意図を感じる。
「介護力世界最低」というフレーズにのせられて、国民は「やはり女は家庭に入って育児や介護にいそしむべきだ」という声が聞こえてきそうだ。まず洗脳するのは、素朴な地方人からというわけかしらと想像する。
また、ホームヘルパー(中年主婦の安い賃金で成り立っている)も足りなくなると、その記事は報告していた。
今、フィリッピンなどからの介護職を受け入れを進めようとしているが、私は非常に心配している。
日本の女性さえ詐取されているのに、アジアの女性をもっと詐取する材料にしそうだ。つまり日本女性より低賃金で働かせるのだ。ヘルパーは2級の資格が廃止され、全員が介護福祉の国家資格を持つように指導されている。これも海外からの労働者との賃金格差をつけるためだと言われている。
それに加えてもっと心配なのは、ヘルパー利用者の意識の低さだ。ヘルパーの一番の不満は、いくら勉強して国家資格をとったところで、家政婦扱いする利用者がまだまだ多いということだ。昨日も事務所で、先輩が「私たちって家政婦以下だね」とつぶやいた。
「お客様は神様だ」というふうに介護もサービス業であるのだけど、あまりにプライドを傷つけられると落ち込む。その上セクハラもある。人の目につかない家庭の中に入っての仕事なので、対応も難しいのだ。
フィリッピンなどのアジアの女性が家庭に入ったら、いくら彼女たちが大学で勉強してきても、出稼ぎのメイド扱いされるのが目に見えている。それが一番の心配だ。(もちろん、制度をよく理解し、来てくれるだけでも「ありがたい」と感謝してくれる利用者さんもたくさんいるから、どうにか仕事していけるのだが、問題は多い。)
とにかく「日本の介護力世界最低に」という記事は、女性やヘルパーに安く介護を押し付けようとする魂胆が見え見えで、不快だった。こんな記事をよく書くな。最近福祉は男性学生も多く、ヘルパーの研修も若い男の子が来ている。料理も上手だったりする。男性がきてくれて喜ぶ利用者さんもいる。身体介助で私は腰を痛めたが、中年女性は腰を痛めやすい。だから、若い男性のヘルパーが手伝ってくれると大いに助かる。介護で女性や家族だけの力を当てにできないことは、介護保険がはじまる理由だったのだから、とっくにわかっていることではないのかな。
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コメント
胡桃さん、書いて下さったのね。うれしい。
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国民は「やはり女は家庭に入って育児や介護にいそしむべきだ」という声が聞こえてきそうだ。まず洗脳するのは、素朴な地方人からというわけかしらと想像する
ほんとに腹が立ちますね。メディア批判もどんどん書いていきましょう。目にとめる人も少なくないはずだから。
さらさら〜とおもしろく書かれているブログなので楽しみに読ませていただいてます。これからもよろしく〜
投稿: discour | 2006年10月21日 (土) 22時00分
コメントありがとうございます。少し目を開いてみると、「おかしいぞ」と思うことが多い世の中です。でも、諦めてはいけないと思うこの頃です。
投稿: 宮野胡桃 | 2006年10月22日 (日) 03時14分