おしゃべり
ヘルパーの仕事で一番大事なことはおしゃべりだ。だいたいが利用者さんからの話を聞いていることが多いが、適切な質問や考えや体験談をこちらもしゃべりながら、大いなる井戸端会議を繰り広げる。
ヘルパーの仕事に話し相手という援助はなくなったそうだけど、利用者さんは話したくて待ち構えている。しかし、こちらはプランにある仕事をこなさなくてはいけない。掃除機をときどきとめながら、返事をする。台所のカウンターで料理しながら、話を聞いてあげる。仕事しながら話を聴くという技術を要求される。
昨日は、それでもじっくり聴いてもらいたいことがあるようで、「今日は30分前に仕事終わりにして、お願いだから話を聴いて頂戴」と言われた。何の話かと思ったら、近所の知り合いの一人暮らしの老人が淋しくて泣いているそうだということ。でも、頑固でヘルパーなどを利用しない。今まで気がつかなかったけどなるべく声を掛けていこうと思う。その他に自分にできることはあるだろうかと相談だった。
体が不自由な男性の介助を手伝う家では、奥さんからは同居している孫(中学生女子)の話を聞かされる。彼女の悩みは、夫の介護より、祖父母や親に反抗しふくれて一緒に食事もしない孫のこと。気休めだけど、「学校にちゃんといっているならまだ安心」「友達もいて、趣味もあるならいいわよ」「私も中学生の頃、親が嫌いだった」「よく、ふくれてばかりいると言われた」などと、なぐさめる。
私が話を聴いたって何も解決などしないけど、話すということで利用者さんや家族の人がガス抜きできるという役目なんだろうと思う。私に病気の不安を訴えながら、「こうやって話していると大丈夫と思えるんだけど、夜眠れなくていろいろ考えちゃんだよね」と言う。そうなんだ、ひとりで考えると悪い方悪い方へと思考が進んでしまうことはある。誰かに言えばいいんだ。「淋しいんだ」「辛いんだ」。そうして、話していると、寝たきりになるよりまだまだ動いて自分の家で生活したいと元気を取り戻す。それはいっときのことですぐに落ち込むことかもしれないが・・・。
戦争の話をし、子供時代の話、亡くなった連れ合いの話、子どもや嫁の愚痴、政治問題、環境問題、話すこと、話したいことがいっぱいある。ショートスティから帰って来た方が言う。「施設はきれいで、皆親切だったよ。でも、皆忙しくてあまりお話できないんだよね。こうやって一対一で話ができるのがいい」。ヘルパーのいいところは一対一だということもある。デイ・サービスなどのまわりに人がいるところでは本音を言えないが、誰も聞いていなければ本音も言える。
しかし、一対一であるがための問題も多いのかもしれない。良心的でないヘルパーもいるかもしれない。岩手ではヘルパーの詐欺事件が争われている。また、セクハラということもある。
話し相手をしながらの仕事はけっこう疲れる。研修もめったにないヘルパーは自分で自分を研鑚していくしかない。良質な仕事をするためには本人の気持ちしかない状態では、疲れているヘルパーが多いのが事実だ。仕事は仕事としてやるが、精一杯やっても何の保障もない主婦パートでしかないことが悲しいかも。実際、気立てのいいヘルパーにおんぶしている介護事業だ。ヘルパーが一生懸命やりすぎるのがよくないという意見もあるが、一対一になったとき、手など抜けないで親身になってしまうのは気立てのいい人間としては仕方がない。やはり制度が問題だ・・・と、私の手の届かない所に思いがいたる。
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