介護技術ではない問題
「介護職員65パーセント・勤務中けが」という記事がありました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20080312-OYT8T00830.htm
私も、ヘルパーの仕事で腰を痛めました。最近、ヨガ教室通いを復活したのも腰のためです。後期の試験中に運動不足からまた階段を上るのがつらくなりました。お医者さんにも「歩くこと」「腰や背中の筋肉をつけること」をすすめられています。でも忙しいとどうしても机に向かうばかりで運動しなくなります。
これも、あの時腰を痛めたせいだと後悔します。両足が動かない利用者さんを床から車椅子に移乗するときに痛めました。その利用者さんは、昼間は居間のこたつで過ごし、夜はベッドで休みます。奥さんがどうにか介護していましたが、腰を痛めてしまったので、朝と夜の介助を頼むことにしたのです。利用者さんは高齢者といっても体格のいい方で、よく奥さんが一人で介護してきたと感心しました。
いろいろ工夫はしましたが、畳に座っている人を車椅子に座らせるのは、私には困難でした。ある時、ぎっくっと腰を痛めたのですが、利用者さんを落とすわけにはいかずにがんばりました。そうして笑顔で通して家に帰り、次の日は休めないので仕事に行きました。立って掃除機をかける仕事はとてもできず、膝をついてはいつくばって掃除機をかけました。利用者さんが「どうしたの」と声をかけてくれましたが、「このほうがゴミが見えるんです。目が悪くなって」と言い訳しました。もう我慢できないと思い医者に行ったのですが・・・。一時的に治っても、すぐに痛めやすくなりましたし、「痛めるかも」とどこかでおそれて仕事をします。これで介護の仕事はできなくなったなと思いました。
今、バイトでは腰のこともあり、他のヘルパーさんには申し訳ないような軽い家事の援助しかしていません。でも、ディ・サービスの手伝いで久しぶりに身体介助をしています。介護技術に不安のあるので勉強しなくてはと、事務所で暇なときに「介護技術」に関する本を棚から借りて読んでいました。技術が足りなくて、腰を痛めたと後悔していたからです。
本を見ていたら、床から車椅子やベッドへの移乗では2人で行う説明が書いてありました。一人でやる場合は、どうしているのだろうと、他の本を調べても2人での介助しか書かれていません。。デイ・サービスでもトイレ介助さえ2人でやっています。利用者さんの安全のためにも難しい場面では、2人で介助をするのが当たり前なようです。でも、施設ではできても、訪問ヘルパーはたいてい1人です。どうしたらいいのでしょうか。
もしかして、1人で介助するには無理がある仕事だったのではと思いいたりました。どうしたって無理な介助をヘルパーさんにやらせるので、みんな腰を痛める。でも、ヘルパーの代わりはいくらでもいるのかもしれません。(代わりがいないことに気がついてきたようですが。)
よく、海外の介護ビデオを見ると、個人の家の中にもベッドまで移乗するための機械が備わっています。介護士の腰を痛めないためだとかの説明もありました。日本では、まだまだ介護士の身体まで考えられないのでしょう。ケアマネさんが計画をするときに、「1人では無理だ」と言える場もありません。腰を痛めたのは、介護技術が下手だったからだけではない問題もあると考えたのでした。
それにしても、その海外のビデオでは、ヘルパーもケアマネも看護師やリハビリの先生が集まって会議をしています。私の経験ではそんなことはありません。ヘルパーだけの会議はあっても、違う職種の人とはないです。そうして、ヘルパーにはきちんと情報が伝わってきません。パーキンソン病の人がした手術がどんなものか、その後どんな変化があるのか、ケアマネさんは知っているかもしれませんが、ヘルパーには報告がなく不安もあります。呂律が回らないのは手術のせいなのか、一時的なものなのか。新聞記事や雑誌で手術内容を知り、「こんな手術だったんだね」と情報を交換し合い、訪問看護士さんとすれ違いざまに具合をたずねます。最近は難病、障害者さんの利用者さんも多いので、病気の知識も必要だと感じることが多くあります。個人で勉強はしますが、会議や研修で全員が同じ情報を持つことが小さな怪我やミスを起こさないことにつながると思うのです。家事援助は、実際は家事をやるだけではないのです。様子をうかがって、励まして、悩みを聞いたりもします。情報が欲しいとつくづく思うこの頃でした。(これは特に、私がたまにしか働かないバイトだからかと思っていましたが、毎日働いているヘルパーさんも情報が欲しいと言っていました。)
そういう訳で、介護士の介護技術だけではなく、怪我に至る問題はいろいろあるなと思いました。一緒にヘルパーの仕事をはじめた30代の女性も腰を痛め、「給料より治療費のほうが高い」からと、仕事をやめました。
そうそう去年、ある男性利用者さんに急に抱きつかれて、びっくりして私が階段から落ちました。「利用者さんを怪我させなくて、良かった」と思い、そのときは気づきませんでしたが、家に帰ると左手がすごく腫れていました。何週間もお風呂に入ると痛かったです。いまでも痣になって残っています。その男性利用者さんはそういう癖があると、後で知りました。前から注意されていれば、私も心構えができていたかもしれません。だから、高齢者の男性利用者さんはそんな人もいるさという感じで頭にきませんが、情報伝達をしないしくみ(会社)に頭にきました。ちょうど新人ヘルパーが入ってきたときなので、「これからはあの利用者さんが、少し触りたがるとはじめに教えて欲しい」とお願いしました。
その他の怪我は、左の親指に熱湯をかけて火傷をし、爪が取れてしまいました。新しく爪がはえてきましたが、爪の表面が波打ってでこぼこです。これは治りませんが、自分の不注意です。慌てて麺をゆでたお湯を捨てたときに、自分の指にかかったのです。なかなか生傷が絶えないヘルパー生活でした。
本人の不注意もありますが、けがをしないための環境づくりは大切なことだと思います。けがをしても治療費もでないのですから、せめて腰を痛めない介護を考えて欲しいです。
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